イタリア紀行:オタクの歩き方(映画ポケモンの聖地・ヴェネツィア編)

 

海に風が 朝に太陽が

必要なのと 同じように

 

 

ポケモン好きのオタクであれば、イタリア国鉄ヴェネツィア・サンタ・ルチア駅へと降り立つなり、小気味良く歌いだすのは必然のことだろう。

 

 

狭い島々に犇めくレストランにカーニバル衣装風の土産を並べる雑貨店、浮かれた観光客の合間を縫うようにして橋と石畳の入り組んだ迷路をくぐり、酒を飲みながら談笑する地元の住民。

水路と小舟のための街と言わんばかりに、思い描いた水の都の光景が眼前に立ち現れる。

 

 

アローラ!(これはハワイ)

イタリア旅行の中でprego(プレーゴ)=「どうぞ」を覚えたUKです。

映画『水の都の護神』に登場した街、アルトマーレの元ネタである、イタリアのヴェネツィアへと旅行に行って来たので、レポートを書き記します。

 

 

左は映画のアルトマーレ。

右はバチカン美術館にて(ヴェネツィア絵地図)。

 

 

 

まず、ヴェネツィアといえば、やはり真っ先に思い浮かべるのが「ゴンドラ!」という人が多いだろう。

高速鉄道の発着する大きな駅のすぐ近くに、線路と並行するようにして海の上を延びてきた道路の先端がちょろっとだけ存在している以外、ここヴェネツィアで車を見る機会はまず無い。

 

 

ヴェネツィアは多数の島々からなる都市であり、交通手段は原則舟か足。至るところに船着き場があり(何なら建物のドアが水路に面していることも)、張り巡らされた水路の邪魔をしないよう、無数の小橋が架けられ、密集した建物の間隙を縫うように小道の網が広がる。

 

 

映画でも、カノンらしき少女を追ったサトシが迷子になるようなシーンがあるが、スマホGPS地図でも無い限り、ノーヒントでヴェネツィア市街を一周することはまずもって不可能である。

 

 

テント張りのテラス席が付いた水辺のレストランでロケット団が料理を頬張るシーンもあったが、実際至るところにそうした店があり、舟の往来を眺めながらパスタをかっ喰らうのも悪くないのかもしれない(ただでさえ物価の高いヴェネツィアの観光客向けレストランで、ロケット団同様の量を頂くのは相当な予算が必要だが)。

 

 

 

映画に登場する博物館のモデルは、紛れもなくサン・マルコ寺院だろう。博物館の横にある塔は鐘楼の再現か。サン・マルコ寺院の内部に関しては撮影できなかったため、ここでは詳述を控えるが、ぜひ一度、自分で足を運んで確かめてみてほしい。

 

 

このすぐ近くには、柱の上に立つ2体の聖像があり、映画に登場するラティアスラティオスの像のモデルと思われる。

 

 

アルトマーレでは、うねった形の鉄の柵が道や窓などを塞ぐような描写があったが、現実のヴェネツィアにおいてもこれと似たような柵が所々に存在している。

 

 

どれもオシャレな感じで視覚的に楽しいので、意識して見てみると楽しいだろう。

 

さらに、アルトマーレでは、家と家の間にぶら下がるようにして洗濯物を干してあったが、これと似た光景も実際に見られた。天気の良い日に現地の路地に行けば、「ああこれか」となる衣類の橋が架けられているのが見つかるはずだ。

 

 

また、ヴェネツィアには、写真のような水飲み場が点在している。アルトマーレでもシャワーズが水浴びをしているシーンが出てきたが、そのシーンとそっくりそのままのものが見られるため、見つけられるとテンション上がること間違いナシだろう。

 

 

 

・番外編その1(メシ)

 

ヴェネツィアでぜひ薦めたい飲食店を先に紹介しておこう。筆者がヴェネツィア初日の夜に利用したTRATTORIA alla Madonna(トラットリア アッラ マドンナ)という店である。

 

 

ヴェネツィアに来ればイカスミパスタを食べたいという日本人は多いのではないか。実をいうと、筆者は人生で初めてイカスミパスタをここで食べたのだが、どうやら始めからLv.97あたりを引いてしまったらしく、この食べ物に対する要求値が上がりまくってしまった。

 

 

また、6€と比較的良心的な値段で提供される自家製ティラミスも、必ず食べてほしい素晴らしい品である。十分な大きさがありながら、攻め際と引き際をどちらも熟知したような、練度の高いほろほろとした甘味が楽しめる。

この逸品を食せば、明日もまた頑張れるというものだよ。

 

 

・番外編その2(カーニバル)

 

映画では、カーニバルに関してはそれほど描写されていなかったが、ヴェネツィアでは毎年2月にカーニバルが催され、大規模な人の動きが発生する。筆者はその直後の3月に足を運び、多少人混みはマシな時期を狙ったのだが、道を歩くと目に入る雑貨店のショウウィンドウには所狭しと華やかな仮面や装飾品が並べられており、カーニバルの面影が感ぜられる。こちらも見応えのあるイベントらしいので、興味のある人は行ってみると面白いだろう。

 

 

・番外編その3(使い所のわからなかった写真集)

 

 

・番外編その4(阿呆)

 

ヴェネツィアの雑貨店でポケカを見つけてもマジで買わないようにしよう!ローマの倍くらいの値段がするぞ!

 

 

こいつは13600円のハラバリーexヴェネツィア産)

無論、ガリガリである。

 

 

 

風花雪月初見プレイ感想譚(金鹿ルート)

(注)この記事では以下のネタバレを含みます。

ファイアーエムブレム風花雪月本編(金鹿)

・黒幕とか怪しいやつの正体とかそういうの

・一部キャラクターの特徴

 

なお、以下のネタバレは含みません。

・各キャラにおける支援会話の詳細な内容

 

 

 

 

こんにちは、UKです。

京都大学ポケモンサークル内をはじめ、一部ポケサー員により支持を集めるファイアーエムブレムシリーズを始めてみました。

遊び始めるにあたり、とりあえず、現在でも入手しやすく話題にもあがりやすい『風花雪月』を購入。

終わったら感想etcを書けという差し金を向けられていたので、軽く書いていきます。

 

 

 

以下、最初のキャラ設定を見たときの第一印象とクリア後(金鹿ルート)の再評になります。

※スカウトしたのは

・フェルディナント

・リンハルト

・フェリクス

・シルヴァン

・アネット

の計5名です。

 

 

もう少し掘り下げていきます。

 

1.アドラーラッセ

 

 

正直な所、金鹿視点だとエーデルガルト&ヒューベルトが9割5分ぐらいを持っていっているため、いまいち何か書けるわけでもない。

気まぐれでスカウトしたリンハルトとリシテアのペアエンドを初見プレイ時に見れたのはおそらく相当大きなアド。あとフェルディナントは全女を幸せにできる器だと思う。屈指のスパダリ。画面越しに妊娠した。

 

2.ルーヴェンラッセ

 

 

顔面偏差値が(そしておそらく素の偏差値も)高すぎる。青ゴリもたまらんけど腹心なのでスカウトに関しては仕方ない。

多分2周目は青で遊ぶ。

 

3.ヒルシュクラッセ

 

 

煩悩は至るところで発散しているためここでは割愛。

てか、このクラスのキャラ全員強くないすか???

起死回生逆転劇&旧友兼宿敵の思いを背負って最後へ〜とかいう、超王道少年マンガ的激アツ展開に押され負けないぐらいになるように、尖った性能とキャラの設計になったのかなってぐらい

いやーよかったよかった

俺はこういうハッピーエンドは好きなのでなんぼあってもええです

 

 

【総括】

想像の500倍くらい製作陣が悪趣味だと思いました。とても面白かったです。

ifとかも勧められているので、手が空き次第遊んでみようと思います。

 

                UK

【就活体験記】キチィ~オタク(ポケモンサークル産)が就活してみた

こんにちは。UKです。

 

去年の夏頃から、「良いところに就職できたらいいし、不満足なら院試受けるcar」という安易な気持ちのもと、法の勉強の傍らで就活をしていました。

 

その中で、それなりに色々とあったので、現在就活に励むポケモンサークルのオタク、これから就活に励むオタクの役に立つことができればと思います。

 

 

臨場感を出すため、実際の最終面接を再現しながら、この記事のストーリーをしばらく間は進めていくことにします。

 

 

 

👨‍🦳:(面接官のおじさん。某大手企業の管理職。つよい。仕事の話が好きそう。)

🐵:(筆者。就活生。京都大学法学部24年卒業予定。最終成績は3勝16敗となる。)

 

 

 

コンコンコン

 

👨‍🦳「ん、どうぞ」

 

キィ~ィ

 

🐵「シツレッシャッス(緊張)」

 

ペコペコ

 

👨‍🦳「……あ、その横の椅子に荷物置いて傘も掛けていいよ、どうぞどうぞ、座ってね」

 

🐵「ンアザマッスゥ ンン シツレッシャッス(慇懃無礼)」

 

👨‍🦳「UKくんだね?」

 

🐵「ンァハィ」

 

👨‍🦳「本社までお疲れさん、……UK君の出てる××高校って公立だよね?年に京大何人ぐらい行くの?」

 

🐵「1人か2人ですね(即答学歴厨)」

 

👨‍🦳「ほほう 君はつまるところ××高校の俊才ってワケだ、大学の単位取得状況も申し分ない」

 

🐵「オソレイリマャス」

 

👨‍🦳「1次からの面接でウチのK(座談会で会った強そうな別のおじさん)と会った話してくれてんだよね。アイツとは同期なんだけど、話は合った?」

 

🐵「タノシク オハナシ サセテイタダキマシタ」

 

👨‍🦳「そかそか。……今までの面接でも真面目そうな感じなのはある程度分かるんだ。」

 

👨‍🦳「……うん!もうね、合格あげるから。おーん。あとは入った後の説明と思って聴いといて」

 

 

 

 

 

 

 

 

!??????????

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんか突然、勝利してしまった。

 

色々と受け答えの準備はして行ったが、先にネタバレすると正直なところ、この会社の最終面接においては本当に一切関係なかった。(逆質問で少しネタ切れ気味になったのでそこは反省点である。)

 

「大学はそりゃまあ良いところなんだから、一定以上の頭はあるでしょ。んで、君の大学の問題点は2つ。コミュニケーションやチームプレー面でとにかくヤバい奴、卒業できるか怪しい奴を弾くだけなんだ」

とのこと。

 

どうやら無事に規定のラインを上手くすり抜けることができたらしい。オタクなのもここでは関係なかったようだ。

 

聞こえの良い話ではないが、僕が申し込んだのが全国転勤型の総合職で、かつ会社運営側の花形ポジションを将来的に目指すコースである以上、手綱を握る側の立場なので、やはりある程度のアタマは求められるのは分かっていた。

 

ただ、そこはもう面接で深掘りも特にされていない。

 

むしろ、「なんか温厚で会議もスムーズにできそう」、「ちょっとポンコツだけど憎めない奴だ」、「仕事も真剣に取り組みそう」といったハートの面を、緊張しながらでも自分の言葉で伝えることができれば、後は「まあでもコイツ〇〇大やからな」と、ほんのあと少し、経歴が背中を押してくれる。はじめにハートの部分からしっかりとアプローチをかけていれば、十分な勝算が見込めるのだ。

 

僕が就活に際して特にお世話になった先輩の1人が

「学歴は後発ダイマ

と、ポケモンサークルらしい例え話をしてくださったのだが、まさにこの通りだった。

 

もちろんこれは、ハート派のアピールが全てというわけではないし、作業意識や能率を重視するスキル派のアピールが悪いなんて言うつもりはさらさらない。

 

ただ、これは、ぜひ1つ紹介させていただきたいエピソードなのだが、とあるインターネット事業会社の一次面接(集団オンライン)で、僕のすぐ横に東大の理系バリバリ研究家マン(院生)がいたことがあった。たぶんオタク気質だろう(ド偏見)。

 

研究家は表情、仕草こそ堅かったものの、自身の研究内容などを論理立てて丁寧に説明しており、「悪いやつではないんだな、実直なやつなんだな」という印象を受けた。

 

ただ、その後の「周りからはどう言われることが多いか?」という質問で、彼は

「私は明るく活発な人間だとよく言われます」

と即答し、面接官の表情が一気に硬化してしまった。

 

その後、自分のターンが回ってきたため、個別指導塾のアルバイトに先の質問で触れた延長で、「面倒見が良い、と言ってもらえることが多々あります、自分としてもすごく嬉しいですね」と返すと、面接官の表情が再び柔和なものへと戻っていった。

 

ここで問題なのは、彼がオタク気質に見えることでも、

「私は明るく活発な人間とよく言われます」

という台詞でもない。

 

むしろ彼が、世界中を闊歩する外国語が堪能なバックパッカーであったり、研究に関する所でも、同じ研究室の仲間や外部の人間との交流・協働について先立ってある程度触れていたとしたら、この台詞も十分好意的なアピールになり得たはずだ。

 

彼の強みとして明白なのは、その説明・プレゼン力に裏打ちされた丁寧さや、研究に打ち込む為の、ここぞという時の集中力であり、今この場でアピールを期待されているのはそこだったのだろう。スキル派としての真っ直ぐさを、自身の意欲にも繋がるなどといいながら、周りから認められたエピソードの1つでも言ってしまえば花マルだったろう。

 

それが、ハート派を通り越してアクティブ派のアピールを目のシワ一本動かさずぶち込んだのだから、途端に疑わしくなる。

 

先ほどまでの流暢で論理的な話も、これでは参考書のコピペや、いいとこ台本を読み上げているようにしか聞こえなくなってしまう。

 

表情が固いのは緊張のせいで、普段はもっとフランクなのだとか言い分はいくらでもあるだろうが、これでは「正体不明」で「匿名化」された、アノニマスの状態に見えてしまう。

 

🐵もよく言われたことだが、

「🐵自身が見えてこない」

状態になるのだ。

 

オタクという生き物の性質上、普段は日陰者としての役割に慣れており、やましいと感じる部分から人の目を逸らすため、仮面を付け替えて踊りを演じ分けるのに慣れきっているのが自分自身でもよくわかった。

 

だが、面接、ひいてはその先の仕事は、マスカレードでも何でもない。仮に、仮面を被るとしても、それを切り離すのはむしろ悪手だ。

 

お前は何者なのだ、どんな時に心が温まるのだ。

 

この問いに対する自分の回答の軸を詰めれば、高学歴、あるいは資格試験や諸般のテストで優秀な成績を収めたオタクは、もともとスペックのある真人間に、プラスアルファで固有の信念の厚さを持ち合わせた、味の濃い経歴の学生となるのだ。

 

チームプレーや他者への感情の震えは、中高の部活やサークルで補おう。

 

ポケモンサークルが決して就活に弱くない所以が今になりよくわかった。今まで色々な先輩から、声の形でこうしたことを教わってはいたが、自分でも再確認したことなので、こうして少しでも形に残してみたい。

 

さて、こうして、選考についての講釈は散々垂れたものの、結局受け身ではそもそも何も始まらない。なので、Amazonギフト券のオマケに釣られたとか何でも良いから、選考、マイページ、説明会、座談会、インターン、企業と大学のコラボ授業、

とっかかりの部分は何でも良い。

 

受けろ、そなたは美しい。

バカとテストと商標権【2022年弁理士試験受験報告】

※一部、公の場に適さない可能性のある表現を含みます。こうした表現が苦手な方は、くれぐれもブラウザバックせず最後まで読みましょう。あと色々多方面の方々、本当に申し訳ありません。始めに謝っておきます。ごめんなさい。

 

 

 

 

第1問 バカとポケサーと弁理士試験

 

???「ポケサー員に聞いてみよう

弁  理  士  試  験  って知ってる!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当然である。

 

 

 

時は2022年5月22日。

既に夏の酷暑が顔を覗かせるこの季節、関西大学の入場口にて、得体の知れぬ不気味な人形を手に持ち、場違いなテンションで独り試験会場の写真を撮影する、それはたいそう不審な少年Aの姿がそこにあった。

証拠写真に写り込む、少年Aのものと見られる左手。彼の手には奇妙な茶色の造形物が握られているのが確認できるが……。

 

 

少年Aの名前はMr.㌆㌅㍓㌰㌄(みすたーうんちーこんぐ)。21歳。

先日ついに夢の70kg台に突入し、「ダイエットの成果が出た」と喜んでいたのも束の間、ものの1週間ほどで+3kgという、教科書掲載レベルのリバウンドをキメてしまった、見るも無惨な哀しき豚である。

 

しかしこの体重増加には、れっきとした(言い)訳があった。

 

そう、令和4年度弁理士試験、短答1次試験の存在である。

 

(本当はもう少し社会的地位を占めているはずの資格なのだが、)皆様の認識からすればマイナー国家資格の筆頭とも言えようか、この「弁理士」という職業名を聞いたサークル員からは

『弁護士のアシスタントか何かか』

『便利だから"ベンリシ"ではないのか』

などと、目も当てられないような扱いを受けており、このままでは本題の弁理士試験の話題に入れないため、今一度簡潔ながらもその概要をまとめていくこととする。

 

 

仕方ないので、私の記事を読んでいるであろうポケモンサークル員たちに向けて、わかりやすい具体例を用いて説明してみよう(懇切丁寧)

 

弁理士とよく勘違いされる仕事として、弁護士がある。漢字が一文字違うだけだが、一体何が違うのか。

 

言うなれば、弁護士というのは法律界の"ドーブル"なのである。

決してザシアンやダークライなどではない。ドーブルとして言い表わすのが適切だろう。

ドーブルがあらゆる技を使うことが可能なのと同様に、弁護士もあらゆる法律上の問題を扱うことが可能である。そんなドーブルでも技を4つしか覚えられないのと同様、弁護士も個々人で見ると完全なオールラウンダーというより、ある程度得意分野があることのほうが多い。

 

対する弁理士は……そうだ。あえて今流行りのポケモンで例えるのであれば、"クイタラン"だと言うのが適切だろう。

(ほぼ)専用技のほのおのムチで部分的ながらも活躍の場を確保するクイタランと同様、弁理士もまた、特許や商標など知的財産の分野では頼りになる存在である。不意打ちやギガドレインといったサブウェポンに恵まれ役割対象の多さを確保するクイタランと同様、弁理士もまた理化学系の知識や英語、民法といった自身の得意分野を随所で活用できる。

 

クイタランダークホールは扱えないが、ドーブルと異なり、ほのおのムチはタイプ一致で使える。弁理士に強盗事件は扱えないが、弁護士と異なり、知的財産の領域では傑出した専門性を発揮することが可能なのである。

 

なんとなくイメージを持って頂けただろうか。

ここからは弁理士試験(1次)の概要と、そこに向けた1週間ほど前までの筆者の様子を記していくことにしよう。

 

 

第2問 暗記と柚◯とボーダーライン

 

そんな知名度の低い弁理士であるが、実はその試験の難易度は指折りの高さを誇っていると言ってよい。

毎年3000人超の受験者がいる弁理士試験試験だが、3回の選抜試験を乗り越えて無事に弁理士となる資格を得られるのは、ものの200人超なのである(難関)

ここ数年の合格率は毎年1桁台後半%で推移しており、普通にナメてかかると、至極当然に12000円の受験料を没収されることになる。

 

のだが。なんとこの男、割とどうにかなると思っていた(実に愚かである)。参考書を買い揃え、一通り試験の概要を確認するなどといった作業は3か月ほど前から行っていたのだが、肝心の試験勉強は1月前から始めて間に合わせるプランを立てていた。

当然ながら(?)作戦と勝算はある。

一度自身で市販の参考書を使ってリサーチしたものについては、自身で再度体系づけて範囲を定めてしまえば、あとは徹底的な反復を繰り返すことで完全に落とし込むことができる・・・完全に自身の経験則による実践論であるが、少なくともこの戦法が通用しなかった文系科目はこれまでない。

短答試験の参考書を一通り通読してみたが、暗記すべき重要ポイントとして記述されている分量としては正直高校世界史よりも少なく感じたというのが当初の自分の素直な感想である。

……これはいける。(この後、やはり自身の鑑識眼の甘さを悔いることになる)

勝負の期間は1ヶ月。春休みの間は特に、他にもやりたいことが山積みであったため、なおのこと短期決戦としたほうが、自身のスケジュールとしても都合が良い。こうして私は、この選択が冥府への扉になっているとも知らず、4月下旬に暗記事項の洗い出しに取り掛かった。

 

ここから先は正直、勉強したりポケカしたり、◯◯同人を読んだり、勉強したり、サークルで寝ていたりしただけなので、試験1週間前まで時計の針を進めることにする。

 

試験6日前。想定していたよりも遅くなってしまったが、一通り、自分のなかで満足のいく「自作レジュメ」は完成した。さて、今までとっておいた力試し用の令和3年度試験問題(去年の問題)を解いてみよう(わくわく)

ちなみに弁理士試験(短答)は、特許・実用新案(20点)、意匠(10点)、商標(10点)、条約(10点)、著作権法不正競争防止法(10点)の5分野計60点で構成されており、このうち一分野でも4割を下回ることなく、40点を取ることができれば合格となる(年により若干の変動はある)。

 

さあ、一通り勉強した後だ。何点とれるかな(期待)

 

特許・実用新案 6点

意匠      4点

商標      3点

条約      3点

著・不正    7点

 

 

 

 

 

 

 

 

(横転の画像)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは側転。

 

閉口する他なかった。

正直なところ、問題を解いている間も、ピーラーで人参の皮をむくように、表層的な部分をかすめ取っているような感触が長く続くばかりだった。

 

弁理士試験、難しいねぇぇぇ(今更)

 

ということで、正直な話、半分ほどここで今年の短答合格は諦める意思に至ったのだが、一方でまた、文字通り泥水をすすって死に物狂いで勉強した受験生時代のプライドも、依然衰えてはいなかった。

これはあくまで、センター試験対策の鉄則なのだが、ことセンター試験においては、どれほど市販の予想問題集を解いたとしても、過去問1年分を精査するに遠く及ばないというものがある。

そして、弁理士試験は、毎年60問問題が出題され、その全てが5択の問題となっていおり、事実上、300問の巨大な○×クイズ集を解いているようなものであり、相当広い範囲の知識を動員することになる。

 

もしや。

 

すぐに私は過去問の分解に取り掛かった。

 

 

 

・・・思ったとおりである。

 

参考書に「過去問の抜粋」のような形として紹介されていた重要参考問題の論点と、令和3年度の問題の随所にある選択肢の根幹の部分とが、一致しているものが数多く見られた。

もう時間がない。ここに来て私は、過去問を使った方法に完全シフトチェンジすることを決めた。結果的にもこの判断は悪くなかったと思われる。

いくら過去問の点数が悲惨だからといって、目を背けるわけにもいかない。ちょうどこの頃、Twitterを開けば例の商標権騒ぎでごった返していたこともあり、スマホを開いたからといって逃げ道は開かれておらず、実際このことがむしろモチベの一つにもなった。

 

 

第3問 明日と詰め込みと最高記録

 

試験前日。土曜日。

この日は、後日ポケカのシティに出る先輩から、練習相手の1人としてお誘いを頂いていた。普段からとても世話になっているし、敬愛する先輩なのだが、今回は試験前ということもあり、迷った末に辞退させていただいた(苦渋の決断)

 

 

 

 

この日。

 

 

 

僕はフェ◯ーチェの同人で×××っていた。

 

 

 

 

………………!???????!?!???

 

 

 

 

 

誤解のないように言っておくが、これは復習をしていたのである。復習だ(重要)

二次的著作物の実物を手にし、テキストとして復習していたのだ(断言)

 

さて本題。

令和2年度の試験についてもこの日の午前中に解いてみた。

 

特許・実用新案 7点

意匠      4点

商標      4点

条約      7点

著・不正    7点

 

合格点にはまだまだ及ばないが、これはかなり自分としては及第点のつもりである。

個人的に苦手意識の強い前半3分野のうち、意匠と商標については足切り回避、特許・実用新案についても足切り回避あと一歩のところまで詰め寄れた。

何より、後半2分野で、6割前後の点数を、ある程度確信をもって取ることができるようになっていたことが自分の中で大きかった。前日にして自分の成長を感じることができて自己肯定感が回復した。これぞ試験モノの醍醐味である。あな、おそろしや、過去問分析。

結局この日は4時半あたりまで起きていたのだが、「少しでも寝るべきだ」という小中同期と親からの†天啓†により、3時間だけでも寝ることにした。これも結果的に正しかったと思う。

 

翌日。

起床後、調べていた通りの電車を捕まえることにも無事成功した。

電車の中で確認すべき事項もあらかた見終わり、冒頭の写真で写した場面に至る。

長丁場の試験に備え、コンビニで買った巻き寿司を食べながら大学構内を移動している際、ヤツは現れた。

 

 

 

 

 

 

糸師凛がいた(邂逅)

いや、違うのだが。ただ、見るからにシュッとした体格に爽やかイッケメーン、それでいてダウナーっぽい雰囲気で黒が似合うものの、決してチャラチャラしたものを感じさせないキリっとしたオーラ。紛れもなく糸師凛だ(違う)

はえ~~~こんなイカした兄ちゃんもこの試験受けんのcar~~~」と他人事として流していた私だったが、トイレを済ませて指定の教室に戻ったあと、再び戦慄した。

 

 

前に糸師凛がいる。俺の席の3つ前だったのだ。

 

 

やがて他の受験者も教室に集まり始める。

不幸にも、私(会場前ドサイドン撮影学生)の周囲にはそこそこ強キャラが集うことになってしまう。

こうして私は、前方を糸師凛、後方をローズが白髪になったスーツおじさん、右側方を試験前永遠睡眠おじさん、左側方を一般大学生ニシパに完全方位された状態で試験を受けることとなった。

 

 

第4問 腹と時計と糸師凛

思わぬ強敵の出現もあったが、これはまだ想定の範囲内である。

試験に来る人間のガチャなどといった、自分でどうにもならない乱数の心配をするぐらいなら、自分でケア可能な不安定要素を如何にして安定させていくかに注力したほうが勝率は圧倒的に上がる。

 

・・・のだが。

 

またしても想定外のことが起こる。

時計を忘れてしまった。ここに来て、何の変哲もない試験中のミスあるあるである。

慌てるな。こういう時の対応策も私は心得ている。何のための駿台模試だったのか。

慣れた目線の動きで、私は前方の机を1つ1つ確認していく。ゆるふわワンピ系女子、小綺麗系メガネ女子、そして糸師凛・・・

 

終わった。考えられる中でも特に最悪クラスのパターンである。

女子2人に関しては、拝借した画像のような、なんか割とよく女子がつけていそうな系(ド偏見)の、ほっっっそいベルトで時計盤も超ちっさい腕時計を置いており、こちらの席からチラ見しようにも非常に視認性が悪い。

↓こんな感じのやつ

 

糸師凛の時計も、時刻の表示方式がデジタルのスポーツタイプで、3つも席が離れていては試験中に覗き見るのは困難を極める。

アナログ式で直径3cm前後の時計盤のある腕時計を、1人でも使っていれば勝ちだったのだが。仕方ない。試験開始前に見えたのだが、後ろの席のローズ風おじさんが典型的なそれっぽい時計を持っていたので、ここでも乱数の悪戯に苦しめられることになってしまった(しかし今回はケアを怠った自分の責任であるため、こればかりは何も言う権利がない)。

 

もうダメだ。こうなったら信用できるものは一つしか残っていない。

そう。私自身の胃袋である。

関大前だということもあり、周辺の飲食店は学生の好みそうなものでごった返しており、麺屋などはいとも簡単に多数見つけられる。商標法の復習に飽きた電車内で、事前に調べておいた甲斐があった。

 

・・・ヨシ、つけめんにしよう・・・!!!(安定択)

 

こうして私は腹時計のタイマーを試験終了時刻の4時に合わせ、試験開始を待つこととなった。

 

 

【試験開始】

問題用紙を勢い良く開け、そのまま特許・実用新案の問題を解き始める。

 

 

 

 

本番直前まで悪あがきを続けていたのが想像以上に役に立った。「5つのうち誤っているものを1つ選べ」といった問題で3つは正しいものを看破できたり、「5つのうち正しいものの個数を答えよ」といった問題でも、5つ中4つまでは正誤の見当がつくなどすることも練習段階と比べて多くなっていた。

 

 

 

 

・・・かなり時間が経った。と、ここで腹が鳴る(恥辱)。私のアラーム(自前)は既に4時を指し示していた。しかし、試験官から「残りn分です」といったアナウンスもまだないし、周囲の様子を伺ってもまだ問題を解き進めている人が目につく。

と、ここで。思わぬものが目に入ってきた(発見)

私の席から桂馬の可動位置(右方)のところに座っている主婦が、置き時計式のデジタル時計(目覚まし時計ぐらいのサイズ)を使っているのが見えたのだ。早速、さりげな~くそちらを覗いてみる。分までは見えなかったが、時のところだけはどうにか見えた。

 

 

 

「14」

 

・・・( ^ω^)・・・    

 

 

 

ん? もっかい見るか。

 

「15(チカッッ)」

 

 

 

 

・・・

 

自らの浅ましい食い意地により、1時間も余分に短縮して試験を受けていたのだ(愚昧)。

 

とはいうものの、15時~16時まで、一時間丸々見直しに使えるのなら、それはそれで悪くはない。結局、マークミスを入念にチェックしてもまだ時間が余ったため、辺りの様子を伺って時間を潰した。

開始前に寝ていた右のおじさんは寸分違わぬ体制で睡眠を続けている。

 

 

 

 

再度よく見ると、おっさんの問題用紙と解答用紙の様子を見るに、すでに必要なマークを全て終えた後であった(一転攻勢)

 

 

 

・・・ついでに糸師凛の様子を伺う。

やはりこちらも余裕ありげな様子で腕を上に伸ばしていた。

 

 

 

んんんんんんんんんんん~~~~~~~~~

これは落ちましたね(確信)

 

正直、全60問中、確信を持って答えられたのは10数問、2分の1、3分の1まで絞り込めたのが20~30問、あとは全てストーンエッジが外れることを天に願った(絶望)

 

グッバイ、一発合格。

グッバイ、おっさん。

グッバイ、糸師凛。

 

どうやら僕はここまでのようだ(惜別)

 

 

第5問 麵と今後と採点結果

もうこれは落ちたな(確信)

ということで、折角関大前に来たにも関わらず他に何もしないのは癪だということで事前にリサーチしていたつけ麵を食べて帰ることにした。

ぐびぐび。うまいねぇぇぇぇぇ。

 

公式の解答は6月に入ってから公表されるのだが、毎年その日のうちに、資格試験予備校大手のLECが解答速報を作成して夜に発表しているらしいので、とりあえず帰宅して風呂に入り、その発表を待つこととなった。

9時すぎ。スマホで確認すると、解答速報が出ていたので早速自己採点。

2分の1、3分の1ガチャは果たしてどれだけ当たっているのか。ストーンエッジはどれだけ外れているのか。

 

特許・実用新案 6点

意匠      2点

商標      4点

条約      5点

著・不正    5点

 

 22/60点

 

 

 

 

 

 

 

なんと、本番にして過去最低記録更新である。

正直、解答速報段階では物議を醸している設問もあったため、厳密な点数まではまだ判らないが、どの道合格ラインには到底達していないというほかない(無念)

 

しかし、こんな点数ではあるが、自分としてはかなり収穫の大きい試験であったとも思う。

まず、自身で「これだ」と確信を持って答えた問題に関しては、9割ほど◯がついた。この点では、自身の成熟が見られ大いに満足している。

また、今回は外すことが多かったが、「間違っているものの個数を選べ」系の問題で、5つ中4つか3つまでは正誤の判定ができていて、残り1つか2つで択を外したという間違え方が数多く見られたものの、裏を返せば、自分にも分のある運ゲーにまで持っていけるぐらいには知識がついてきたということでもある。

断じて、悲嘆に暮れるほど自分のやってきたことが無駄になったわけではない。

 

ただ、当然のことながら反省点のほうがやはり大きい。

1,勉強を始めるのが遅すぎた

資格試験予備校が専用の講座を設置しているぐらいなのだから、冷静に考えれば何か月も準備に要するというのが通常であろう。遅くとも、大学が春休みに入った段階あたりから一通り基礎知識を詰め込み、2ヶ月ほど前から過去問や模試で練習を繰り返す必要があるというぐらいには、1次試験の段階から突破難易度は高いものだといえる。

 

2,段階を踏んでいない

将来的には司法試験を受けようと考えている身である以上、その前に、自身が特に関心のある知的財産の分野について理解を深めるため、弁理士試験をステップとして利用しようと考えていたのだが、「ステップ」とするにはあまりに専門性が高度であり(別の職業として成立しているぐらいなのだから当然だが)、弁理士試験を受ける前のステップとなるものが更に必要だと感じた。これは完全に己の無知を恥ずべきなのだが、知的財産管理技能検定というものが、キチンと国の公認の試験として、英検と同じように年に数回開催されているらしい。7月に試験があるため、まずはこちらの2級合格を目指して、基礎的な事項の整理をもう一度行っていくことにする。

 

何はともあれ、自身が見積もっていたほど弁理士試験の難易度は高いということが身に染みてわかった。と、同時に、大学入試のときとはいささか異なる、国家試験特有の緊張感も味わうことができた(有意義)

 

 

おわりに

暑苦しさを取り除こうと努力したものの、やはり自身の取り組みたいこととなると熱意が入ってしまいました。最後までお読みいただきありがとうございます。来年は司法予備試験、弁理士試験試験ともに受験しようと思うので、これからも目いっぱい頑張ります。俺たちの戦いはまだまだ続くということで。Mr.㌆㌅㍓㌰㌄先生の次回作にご期待ください。アデュー、アデュー。


術士と珈琲



ドトンっ カタタ……


「っとっと。手を滑らせるなんて珍しいね、ジュリー。私も取っ手を向けて渡せばよかったよ。」

『……大変申し訳ありません。プロフェッサー、お怪我は?』

「大丈夫さ、中のコーヒーはもう飲んでたし。……アンタも破片に気をつけるんだよ、見た感じどこも割れてないだろうけど。」

『……ご心配のお言葉ありがとうございます。ですが問題ありませんよ、"私"ですので。』

「問題大ありさぁ。万一にでも損傷して、漏れ出た術力をアンタに注いでやるのは誰だと思ってるんだい。ホレ、ゴム手袋。」

『……錬成でお使いにならないのですか?』

「退官しても実験を続けるほど研究馬鹿じゃないよ、私は。デスクの上にあるのだって、ホラ。……アンドリュー・オールトに、ニッキー・ドールマンのやつ。積ん読してた小説どもさ、術書なんか1冊もないよ。」


半分はウソだ。

両脚がいよいよ本格的に動かなくなり、やむなく学院を離れざるを得なかったが、定年退職なんてものはまだ10年以上も先のものだったのだ。ハァ。まだまだこれからと思っていたのに。


「……あと、もう私を"プロフェッサー"なんて呼ぶんじゃないよ。エリカでいいよ。エリカで。」

『……かしこまりました。コーヒーのおかわりもすぐにお作りしますね。』


カップを拾い上げたジュリーが、スタスタとキッチンへ引き返していく。

……ジュリーは本当に聞き分けの良い子だ。理術士失格の私が創り出した、唯一無二の最高傑作だ。



……数年前、同僚の本の虫に勧められてここにある小説どもを買ったは良いものの、いざ手にとるとこの手の本は「読むときの作法」が分からず困ってしまうものだ。

思えば、私は小さい頃から教科書や学問書、術書以外の書物は殆ど読んだことがない。

生まれつき術力のバランスが不安定で、特に脚を動かすのが難しかった私は、小さい頃から勉強に明け暮れ、気付いた時には、自らの脚を治すため、最難関の理術士試験に苦節の末受かったにも関わらず、一攫千金の実務家の道を諦めて、女学院で研究職に就いていた。

友人らは皆んな実務家となってしまい、出会いの機会にも恵まれず、最愛の親も失った私の心を、孤独が食い荒らすのは時間の問題だった。

ひとつだけ、これに対抗する手段があった。錬成だ。脚の不自由もあり、日常生活を送るのにもかなり苦労していた私は、専業のヘルパーとなる存在を自らの手で錬成することにした。

とはいえ、創ろうとしていたのは言ってしまえば人造人間であったため、その錬成は困難を極めた。真の自立式人型錬成物を創ることは、暴走の危険性の観点から厳しく規制されている以上、思考や行動の自由性にある程度の制約を課しておかなければならない。そうした制約を錬成の際に吹き込むのだが、これがまた(少なくとも私にはとびきり)難しい。

余分な感情を抱かせたり、また自ら抱いたりしないため、麗かなメイドのような錬成物を作ろうとするのだが、どうにも制約を上手くかけられず、私の家の外の自由な世界へと離脱したがるおてんば娘たちばかり錬成してしまい、規定に従いやむなく破壊する……といったことの繰り返しであった。

しかし、ジュリーだけは違う。

本当に彼女は私の唯一無二の最高傑作だ。少々強めに「私のもとから離れて行ってはならない」という念を注いだのが功を奏したのだろうか。文句も言わず、私には荷の重いことに関しては一通りテキパキと片付けてくれる。嬉しい誤算と言っても良いのだが、彼女は生身の人間でもそう類を見ないほど私に対して献身的になってくれるうえ、いつも気遣いをしてくれている。



『……コーヒーのおかわり、お待ちしました。』 


ぼんやりとしているうちに、ジュリーのしっとりとしながらもはっきりとした声が私の追想を切り裂いた。


「ん、ありがと。……それにしてもアンタは本当によく働いてくれるね。文句のつけようがないよ。」

『この上なく嬉しいお言葉です。』

ジュリーが少し嬉しげな様子で面食らったようなかわいらしい表情を浮かべる。

『プr……あー、プロ……フェッサーエリカ、随分と険しい顔で考え事をされていたようですが、何か辛いことでもあったんじゃないですか?』

なんだいこの子。たまに思うけど、自分のことは鈍感なくせに私のことに関しては妙に勘が良いね。

「いやなに、昔のことを思い出していただけさ。私は理術士としては失格だからね。錬成した中で余分な情を抱かずにここまで付き合ってくれてるのはアンタだけだよ。私が錬成してきたのはワガママ言う子ばっかりで文字通り手を焼いたもんさ。」

『……プロフェッサーエリカは、よくご自身を理術士失格だとおっしゃいますが、……私はむしろ、そんな"理術士失格"の貴女のほうが良いですよ。あまり気を落とさないでください。私がいるんですから。』

「ハッ、何言ってんだい」

褒められたことへの喜びなのか、歯がゆそうな照れなのか、そんな表情で目を下にそらしながら、しきりにペコペコとお辞儀をしているジュリーを横目に、私はカップを手に取る。

どこも欠けていないと思っていたカップの口元が、小さく欠けているのを気にも留めず、渇いた身にコーヒーを流し込んだ。


「新歓用クイズ」作成の手引き

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先日マホイップの指人形を買ったらトリプルミックスver.が出ました。very嬉しいです。

どうも、京都大学ポケモンサークル2020年度新歓担当、UKです。

 

この記事は、新歓の時期においてポケモンサークルのTwitterアカウントで公開する、アンケート機能を用いた択一式の日替わりクイズに関し、作問・アレンジする際の主要な注意点をまとめたものです。

「新歓用クイズ」は通常のサークル内イベントで用いられるクイズとは性質を異にしており、その作問作業の難易度は年間を通しても屈指の高さを誇るものであると認識しています。そのため、私よりも後の代がこの新歓用クイズを少しでも作りやすくできるよう、この記事を書かせていただきます。

 

まず端的に方針を述べるのであれば、「入試問題ではなく広告を作る」ということを意識してもらえると非常に良いと思います。

あくまで新歓用クイズの役割は、新入生の目に我がサークルの活動の痕跡が目に入る機会を少しでも増やすこと。#春から京大などといったタグも必要に応じて活用する以上、この広告を散布する対象には、ポケモンオタク以外の不特定多数の人が含まれていることを忘れないで下さい。その人がポケサーに入らないとしても、その人の意識に少しでも残るだけで、「そういえばポケモンサークルとかもあったよ、お前、対戦とか真剣にやってるんなら入ったら?」などと、ポケモンサークルの存在を知らないポケモン好きにも、人づてに我がサークルの名前・存在が伝えられる可能性が高まるのです。

この意味で、新歓用クイズの役割は「できるだけ多くの人の目にとまり、少しでも脳を刺激して印象に残すこと」だといえます。

 

では「できるだけ多くの人の目にとまり、少しでも脳を刺激して印象に残す」ことができる可能性の高いクイズとはどのような特徴が考えられるのか。

下記の通りいくつかのポイントを指摘しました。

 

1,想定される正答率は5割強が目安

 

交流会でもそうですが、基本的にあまりにも難易度の高い一問一答形式の問題は敬遠される傾向にあります。オタクたちでもせいぜいそのジャンルに精通している人がやっとわかるという難易度の問題であれば、大多数の人が「そんなもの知らないなぁ。何もわからないや、別にどうでもいい」と感じるのは目に見えています。

「ちょっとこれは分かりそうだ。このポケモン知ってる、懐かしい、どんなポケモンだったっけ。」という気持ちを初見で抱かせることが肝要です。

新歓用クイズを見た人が少し感心を持ち、少し考え、正答を導き出したとき、その人の脳は明らかに喜んでいてそれは印象に残りやすくなるだろうと思われます。(もちろん、ズルをして検索をした人の印象にも残りやすくなります。)

反対に難易度が低すぎてもこの現象は生じないため、適度な難易度は必要です。

 

2,素材選びの公式準拠の徹底

 

基本的に問題の素材は「公式のもの」からです。

といってもその広さは膨大なため、ここでは反対に、僕が意図的に避けていたジャンルをいくつか理由付きで掲載します。

ポケスペ(公式だが、割とオタクすぎて一般人の知名度が低い。設定の改変や描写にも賛否両論があり、無難で穏当とは言い難い。)

・実況動画(特定の配信者とのトラブルに繋がる可能性もある。あまり実は興味を持たれない傾向にもあるし、好き嫌いが分かれ得る。)

RTA(正直オタクすぎる。コアなファンでないと馴染みが薄い。)

ポケモンサークルそのもの(そんなもの普通に紹介すればいい。あと別に入る前に聞かれてもふーんとなって終わり、一般人はなおのこと興味がない。)

 

反対にこれはOKだと個人的に思うものも掲載しておきます。

ポケモンGOなどのアプリ

ポケモン関連のテレビ番組

ポケモンセンター(実在)

・企業、公的機関とのコラボレーション事業

 

3,問題文、選択肢に影のヒントがある

 

これについては後で例題を掲載します。

 

4,ポケモンの知識に限らず、一般的な知識を活用することでも正答へのアプローチが可能

 

あくまで、主たるターゲットは大学新1年生です。少し前まで幅広い勉強をしてきた彼らが、知識的な部分で自身のプライドを刺激するような問題に対峙した際、立ち止まりやすくなることは想像に難くないはずです。彼らの潜在的な知的自己承認欲求をうまくつついてやれば「良い広告」として機能する可能性も高まります。

 

ではここで例題を一つ掲載します。

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見て頂ければわかると思いますが、「英語」という一般知識要素を用いてオタク知識とは全く別角度からのアプローチが暗示的に可能になっている点、ハルカという人気キャラクターからの出題であるという点が目を引きます。自画自賛な部分もありますが、難易度設定も、これを見る限りかなり適切だったといえるでしょう。

 

以上の点に注意して、実際の「問題原案回収→作問」のプロセスの手順例を述べていくことにします。

 

問題原案
映画「劇場版ポケットモンスター アドバンスジェネレーション 七夜の願い星 ジラーチ」では、エンディングにポケモンの世界での星座がみられ、こぐま座ヒメグマおおぐま座リングマなど、実際の星座とリンクしています。
では、はくちょう座はどのポケモンを表しているでしょう?

正答:カイオーガ

 

非常に素材の引っ張りどころが良い問題案なのですが、白鳥座カイオーガを直接的に結びつける要素が薄く、オタクから見ても相当な難易度の問題になってしまっています。

そこで、まずは素材の引っ張りどころの良さは大事にしたいので、他の星座はどのようになっているかを調べました。

 

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ラインナップを見る限り、おとめ座やさそり座などは比較的難易度を落とすのに使えそうです。さらに、よく見ると夏前後の時期の星座として知られる星座の名前が並んでいることにも気付くことができます。ジラーチは七夕がモチーフのポケモンなので、この点についても遠回しなヒントとして活用できないかと検討します。

 

これまでに登場した点をできる限り踏まえて再考すると、次のような問題を作成することが可能です。(Twitter用の字数の調整まではしていません。)

 

Q、映画「劇場版ポケットモンスター アドバンスジェネレーション 七夜の願い星 ジラーチ」では、七夕をモチーフにしたジラーチにちなみ、エンディングにポケモンの世界での星座がみられ、こぐま座ヒメグマおおぐま座リングマなど、実際の星座とリンクしています。次のうち、登場した星座とポケモンとの組み合わせとして正しいのはどれ?

 

へび座 ジャローダ

おうし座 ミルタンク

おとめ座 サーナイト

おおいぬ座 ウインディ

 

正答 おとめ座 サーナイト

ジャローダはこの世代にまだ登場していない。(ライトなポケモン知識からの絞り込み。やや有名なポケモンなので一般人でも比較的違和感を抱きやすい。)

おうし座は冬の空にみられる星座&ミルタンクは♀のみ。(ライトなオタク知識&一般知識からの絞り込み)

おおいぬ座は冬の空にみられる星座。(一般知識による絞り込み)

 

といった感じの問題が作れます。

 

 

最後に

あくまでも私が記した内容は、1人の元担当者が意識していたものに過ぎませんので、時の流れに応じて私の考えるものが不適当になったり、新しい新歓用クイズのあり方が確立される可能性を否定するものではありません。

しかし、新歓という仕事は思いの外難易度の高い仕事の一つであることは私も重々承知しているつもりです。この記事が少しでも参考になったというのであれば幸いです。

    2022 4・5 UK

【注意】西洋絵画を読み解く ”OPPAI is GOD” の方程式

【はじめに】本質的な内容に関しては本当に大真面目なのですが、本記事には過激(というか今回はモロ)な表現が含まれる可能性があります。どちらかというと、周りに他の人がいない所で読んだ方が適当な言い訳をしなくて済むかもしれません。苦手な方は気を付けながらブラウザバックせず最後まで読みましょう。

 

 

年の瀬も近くなり、肌を刺すような寒さも厳しさつのる今日この頃、意味の分からんこの記事のタイトルに釣られた皆さまにおかれましてはいかがお過ごしでしょうか。

どうも、京都大学ポケモンサークルのボブサップこと、UKです。

 

 

いきなりではありますが、みなさまは私が次に掲げます絵画をご存知でしょうか。

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ドラクロワ 『民衆を導く自由の女神』)

 

ほとんどの方が一度は目にしたことでしょう。

19世紀フランスのロマン主義を代表する巨匠、ドラクロワの作品です。

 

まずそもそも、この絵は何の光景を描いたものなのでしょうか?

 

比較的多くの方が「これはフランス革命の一場面を描いたものだ」という誤解をされているように感じますが、この認識は誤りです。

正しくは、1830年の7月革命を題材に描いたものです。

 

この絵画については、情動的で激しい筆致のドラクロワに代表されるロマン主義と、それまで美術アカデミーの中心的立場に鎮座していたアングルに代表される新古典主義との対立軸に注目しても面白いですし、良家出身で物腰柔らかなドラクロワが、作品の中では革命を熱く語り反体制的なテーマを掲げているという、矛盾を孕んだ背景に焦点を当てるのも楽しみ方の一つです。(ドラクロワ本人は暴動に参加していないのにも関わらず、銃を抱えて先陣に立つシルクハットの男として自身をこの作品の中に描くほどです。)

 

しかーーーーし!!!!

この絵をふと見かけて、教科書の片隅にあるのを紹介されて、この記事にさっき貼られた画像を見て、おそらく大半の方がまず目を向けたのは、ある一点に絞られると断言できます。

 

答え合わせしましょうか。

 

そう、おっぱいです。

 

いやはや、これは見事だ。なかなかにご立派。素晴らしいものを持っていらっしゃる。

服からはみ出した生命の神秘を目に焼き付けようと、女子の目を気にしながら世界史の時間に教科書・資料集を熱心に見つめる、若き日の皆さまの情景がありありと目に浮かびます。(男子校????? しりません)

 

しかしまぁ、ここで一つ素朴な疑問が思い浮かぶものです。

 

なんでこの人おっぱい出してんの???

 

マジでなんで????

そう。ここは戦場。野郎たちが群れになって暴動を起こしている所に、クッッソでかい旗を掲げていて、さらには裸足でおっぱいまる出しの女の人が最前線で群衆を率いている。

 

普通にやばくね? しぬやん。

 

ハイ。ですよね。革命の一端を描いたにしては登場人物に違和感がありまくりです。

こんな女の人、戦場にいるわけないじゃないですか。

 

実際そうです。この女の人は存在していません。

 

というのも、彼女の正体は、”マリアンヌ”と呼ばれる女性なのです。

彼女はフランスの自由の象徴であり、フランスからアメリカへ贈られたかの自由の女神のモチーフも、このマリアンヌという架空の人物なワケです。

 

それを知っていると、暴動の様子を描いた絵において、センターポジションを占めながら周囲と比べて光を当てられていて、フランス国旗を高々と掲げているのにも納得がいきます。

 

こうした背景を知ったうえでこの絵を見れば、先ほどのような疑問は生じないでしょう。まどろっこしいことこの上ありません。

 

しかしまあ、現代人の我々が混乱するぐらいなのだから、当時の人もさぞかし混乱したのではないでしょうか。直近の大事件を描いたものなのに虚構が混ぜられ過ぎだ、事実がねじ曲がっているのではないか・・・

 

否ッッ!!

まったくそんなことは無かったものと思われます。むしろこの絵を見た瞬間に「あ、この女の人は実在しない人だな」と、当時であれば、マリアンヌを知らない人ですら気づくことができたでしょう。

 

大変長らくお待たせいたしました。

ここで登場するのが、みんな大好きOPPAIです。

 

おっぱいを丸出しにした女の人が実在するはずがない!!!

 

コレが最大の決め手です。

こうした思考にすぐ至らせるためにも、胸部にも光が当たりやすい構図になっているものと私は思います。

 

でもでも。

なんで「おっぱいを出していたら実在しない」ということになるのでしょう。

 

ここで我々は時代を遡ってみることにします。

 

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ボッティチェリ 『ヴィーナスの誕生』)

 

こちらも有名な作品ですね。ボッティチェリ大先輩の描いた、『ヴィーナスの誕生』です。

 

まぁこちらもこちらで、それは見事なスッポンポンなわけです。ヨーロッパで長らく実権を握ってきた性に厳格なキリスト教勢力の存在もあり、オイオイオイオイという声はすぐにあがりました。

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しかし、当然こんなことでは乳の情熱に駆られた漢たちが屈するはずがありません。

 

「イヴって全裸で登場するじゃないですか。要するに神話の登場人物ってのは裸がスタンダードなわけでして。決してただのエ◯画像じゃないんですよ。そういう風にしか理解ができない感性の問題だと思います」

と、強引ながらも一理ある理屈を押し通して論破し、次から次へと漢たちはそれはそれはご立派な作品を仕上げていきます。

 

同じテーマでも人によっては、わざわざセルライトを描き足したり(ちょっと前までは男女問わず肉付きの良さが人間の美的価値の中でも相当部分を占めていました)、反対に、ちょっと不自然にすら感じてしまうぐらい妙に現実的なガリガリ体型だったりを描いたりもしていて、こういった点に切り込んでいってもヌードというジャンルは面白いのです。

 

やや話がズレてきました。

 

まあ何やかんやあって「神ならおっぱい丸出しでOK🙆‍♀️」という暗黙の了解が広まっていったワケですが、時代が流れるにつれて比較的早い段階から革命的な逆転現象が生じてくるのです。

 

そう。

「おっぱい is GOD」の時代を迎えたのです。

 

「おっぱい丸出しの女の人がいたら、それは神が描かれたものだ」

という原初の状態からはある種倒錯した状態になっていったのです。この流れは非常に長い間継がれていくことになります。

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(バルトロメウス・スパランヘル 『無知に勝利するミネルヴァ』)

 

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(ヴィクトル・カルロヴィッチ・シュテンベル 『イヴ』)

 

さてさて。

こうした流れを踏まえたうえで、こちらの作品も紹介することにします。そろそろ右手がお忙しくなってきた頃合かと存じます紳士の皆様も、どうかご高覧くださいませ。

 

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(ピーテル・パウルルーベンス 『マリー・ド・メディシスの生涯』より 『摂政マリーの至福』)

 

時の大権力者、フランス王妃のマリー・ド・メディシスから依頼を受けたルーベンスが描いた連作の1作品です。

キューピッドらに囲まれ、正義や公平などのシンボルとされる天秤を中央で掲げているのは、マリー本人です。

 

……ん?

待て待て。この人めちゃくちゃおっぱい丸出しじゃないか???

なんと、現実の人(しかも存命中)を描く際、露骨なまでにおっぱいをボロンさせて描いてしまっているのです。

 

 

おっぱいを出すのは神でなければならないのではなかったんじゃ……??

 

 

いえいえ。逆です。

 

 

むしろ、「おっぱいを出しているということは『神』」なのです。

 

 

このマリーは正義の女神に仮託して描かれており、もはや神格化されている状態なのです。もはや神なのだ。権力の限りを尽くすマリー・ド・メディシスはもはや女神の域なのだ。一般人の手など届かぬ、雲の上のお方なのだ。と。

 

こういったケースのように、歴史上の実在する人物がおっぱい丸出しで描かれている場合は、その人物を神格化する意図のもとで描かれていることも多いのです。

 

 

オマケにもう一つ。根強い"OPPAI is GOD"の風潮の中でこんなパターンも出てきます。

 

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ゴヤ 『裸のマハ』)

 

へぇ…… ベッドシーン?かァ〜

なんかあんまり神話っぽくないよなぁ。

 

……

 

………

 

…………エッ もしかして

 

マジで神話じゃない……?

 

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_______ひょっとして、†素人†・・・ってコト!?

 

 

ご名答。

こちら、神話でもなんでもなく、実在する女性を描いたヌード画の先駆けとなったと言われる作品です。それまでは「シンワデスヨ」感を出すためにキューピッドを描くなどするといった工夫も見られたのですが、この作品については小細工一切ナシです。モノホンです。モデルとなった女性については完全に特定できているわけではないのですが、実在の女性の裸体を描いたことに間違いはありません(ある意味間違いではありますが)。依然カトリックの強いスペインでそれが見逃されるはずもなく、ゴヤは宗教裁判にもかけられてしまいました。

この作品と対応する形で『着衣のマハ』という作品もゴヤは描いています。

 

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この『着衣のマハ』と比べて『裸のマハ』は、やや挑発的というか悪戯な表情を浮かべていますし、ベッドもぐちゃぐちゃになっています。

 

この2つの絵の間に、果たしてどんなウッフンアッハンなことがあったのでしょうか。単に裸像を1枚描くだけではなく、連関性のある絵を描くことによって、どストレートなエロスを回避し、オトナ的な重層感を持たせる意図もあったのでしょう。

 

……とまあ、完全な「おっぱいは神」という方程式の構図は少しずつ崩れていくわけですが、それでも、神々の裸像というテーマ自体は今も変わらず人気です。我々が西洋絵画を鑑賞するときも「おっぱいは神」を覚えておくだけで、若干気まずかったアンナ絵やコンナ絵に対する見方を変えることができますし、堂々と胸を張って胸をガン見することができるようになります。

 

これまでは美術館で

 

「オッパイキレイダナ……」

 

だったものを

 

「コレハ、カミガミノヨウスヲエガイタモノナノカ……ナルホドナルホド…………オッパイキレイダナ……」

 

に昇華させることができるのです。恥じらうことはもうありません。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。美術館でおっぱい丸出しの絵画と対峙してもえちえちすぎて混乱するだけ、という事態になると、せっかくの鑑賞の楽しみ倍増チャンスを逃してしまうことになりますし、仮に、分かっているひとと一緒に行ったとしても、この説明を美術館でするのは少し憚られる場合が少なくないことでしょう。本記事を通して、少しでも絵画鑑賞をさらに楽しむための予習ができたらという意図で執筆した次第ですので、参考にしていただけるのであれば、嬉しいことこの上ありません。

 

ではでは、最後に皆さまへ別れのご挨拶を。

 

 

 

 

 

おっぱいは神だーーーーーー!!!!!!!!

 

 

 

参考文献 山田五郎 『知識ゼロからの西洋絵画入門』(幻冬舎